1. 超音波洗浄機の構成
超音波洗浄機は液中に超音波を放射させる洗浄用超音波振動子、振動子を駆動するための発振器から構成されています。家庭用のセパレートステレオにたとえると超音波発振器はアンプ部分となり、振動子はスピーカーになります。
2. 超音波洗浄機であらえるもの
超音波洗浄機の作動周波数は15 kHz~3 MHzが実用化されており、洗浄物や汚れの種類などから選ばれています。
プレス部品や金属加工部品のような、油汚れが付着している物は26 kHz~38 kHzの周波数帯域の洗浄機が選ばれています。レンズやHDD部品のような精密な部品は、70 kHz~400 kHz近辺の機器が使われています。
また、LCDガラスや半導体ウエハなどに付着しているパーティクルと呼ばれている無機質の汚れの除去には、超精密洗浄用のメガソニックと呼ばれている500 kHz~3 MHzの洗浄機が用いられています。
なお、べっこうや真珠、オパールなどを超音波洗浄すると艶がなくなります。また腕時計本体やカメラは防水仕様でも洗浄液が入ることがありますのでご注意ください。
3. 発振器
発振器は、商用電源の電力を超音波電力に変換しています。
超音波振動子は洗浄液の深さや液温などで作動する周波数が常に変わるため、発振器の作動周波数を最適な状態にする必要があります。周波数を変える方法としては、人が最適作動周波数に調整する「手動式」と、電子回路が最適周波数に調整する「自動追尾方式」や周波数を変調する方法などがあります。
また、発振出力も常にセットした出力になる回路(定出力回路)を備えた発振器が一般的になり、周波数自動追尾回路などとの相互作用で高性能の洗浄が可能となっています。なお、超音波振動用の電力を扱っているため「発信器」ではなく「発振器」と表記しています。
4. 振動子
洗浄用超音波振動子は用途により超音波洗浄槽、超音波振動板、超音波投込振動子、ライン型シャワー、スポット型シャワー、卓上型、ホーン型の7 種類に分類されています。
超音波洗浄槽

洗浄槽の底面または側面に振動子を直接接合した洗浄用超音波振動子
スポット型超音波シャワー

円筒状に流れる洗浄液を介して超音波洗浄を行う洗浄用超音波振動子
超音波投込振動子

防水形の密閉ケースに振動子を直接接合し、洗浄槽に沈めて使う洗浄用超音波振動子
ライン型超音波シャワー

直線又はカーテン状に流れる洗浄液を介して超音波洗浄を行う洗浄用超音波振動子
超音波振動板

板状の金属板や樹脂板などに振動子を直接接合し、洗浄槽にネジなどで取り付けて使う洗浄用超音波振動子
ホーン型超音波振動子

振動子に音響放射体(以下,ホーンと記述)を接続し、ホーン先端を洗浄液に入れ使用する洗浄用超音波振動子。通常の超音波振動板の10倍程度の振幅を発生し、強力洗浄が行える。
しかし洗浄面積が大幅に少なくなる。発振器はホーン先端の振幅を一定にする定振幅回路を装備した超音波溶着用発振機などを使用する。
卓上型超音波洗浄機

槽型の洗浄用振動子内に発振器が収納され、机の上などで使用する超音波洗浄機。大型のものは一体型超音波洗浄機ともいう
5. 超音波はどこから出てるの?
洗浄用超音波振動子の振動面裏側にはBL振動子などの振動子が取り付けられており、発振器からの電力を超音波振動に変換しています。振動子の振動はステンレスなどの振動面から液中に放射されます。
6. 超音波洗浄の原理
超音波による洗浄は、1キャビテーション、2加速度、3物理化学的反応促進作用、の三つの相互作用によるものと言われています。特に、キャビテーションが超音波洗浄の最も重要な役割を果たしています。
このキャビテーションは発振周波数が低いほど発生しやすく、加速度は周波数が高くなるに従い大きくなります。
また、超音波洗浄は洗浄物、汚れ、必要な清浄度などの目的に合わせた超音波周波数の選定と、洗浄液の温度や洗剤の種類などの条件設定が必要です。
7. 他の洗浄方式との比較
洗浄方式には超音波洗浄以外に様々な方式があり、汚れや処理量、コストなどから選ばれています。それぞれの洗浄方式が対応可能な汚れを以下に示します。
項目 汚れの種類
油分 切粉 パーティクル フラックス 埃・ゴミ
超音波洗浄
スプレー洗浄 ×
2流体ジェット洗浄 × × ×
バレル・揺動洗浄 ×
噴流バブリング洗浄 ×
アイススクラブ × ×
8.超音波洗浄用の洗浄液
超音波洗浄機の洗浄効果は超音波機器だけでは決まりません。洗浄工程の他に洗浄液の選定が重要な項目となります。超音波を用いると水だけでも洗浄効果がありますが、適切な洗浄液を使用することで、さらに高性能な洗浄が行えます。現在は大気や人体への影響が大きい有機溶剤系の洗剤の使用は少なくなり、健康被害が起きにくいアルカリ系・酸系・中性の水系洗剤や、炭化水素系の洗浄剤が主に使われています。
なお、洗浄液は種類により保管方法や量などが規制されている場合があります。また、下水への放流は環境関連法などで規制されておりますので、ご注意ください。詳しくは洗浄液メーカーにお問い合わせください。各洗浄液の一般的な洗浄効果の例は、こちらの表をご参照ください。
9. こんな洗浄をしています
超音波洗浄機取り扱い企業
株式会社カイジョー
半世紀以上にわたる超音波洗浄機の開発と製造。半導体から油汚れまで、用途に応じた製品ラインアップ。

株式会社ヒメジ理化イノテック(旧社名 新サン電子株式会社)
洗浄目的に対し常に洗浄の最適化を提案するとともに、環境負荷の低減やより高い安全性の追求など時代の要求に的確にお応えする各種装置を提案しています。
超音波工業株式会社
汎用性の高い洗浄力の26kHzと38kHz、ダメージレス洗浄の70kHz、強力な洗浄力の15kHz・20kHzと、幅広い周波数のユニットを取り揃えています。
東京超音波技研株式会社
工場での部品洗浄から研究施設でのガラス器具等の洗浄まで、幅広く対応できる充実のラインナップ。
日本電子工業株式会社
卓上型タイプ、集束ホーンで小径穴の洗浄に適しています。
本多電子株式会社
WDXシリーズ:同一振動子から2周波同時発生し均一洗浄とダメージ低減を両立。ソフトな洗浄からハードな洗浄まで、最適な洗浄力がえられます。
BL振動子取り扱い企業
本多電子株式会社
ボルト締めランジュバン型振動子:圧電セラミックスが機械的に結合されているため、高振幅励振時においても破損がなく堅牢です。
日本特殊陶業株式会社
産業機器用(加工機等)、医療装置用(手術用メス等)、
幅広い分野に採用されております。
株式会社富士セラミックス
圧電セラミックス振動子の専門メーカーとして、特長ある各種振動子を1品から量産品まで対応します。
液循環装置や乾燥機、洗浄用超音波振動子を筐体に搭載し、特定の洗浄用途に最適な構成にした機器を「超音波洗浄装置」と呼んでいます。 超音波洗浄装置は手動1槽式から、全自動多槽式まで様々な機器があり、洗浄用途や使用方法などに合わせて製作しています。洗浄工程は一般家庭用の洗濯機と同じように、予洗>洗浄>リンス>乾燥の4工程が一般的です。この4工程の槽を搭載した装置は、4槽式超音波洗浄装置と呼ばれています。 なお、洗浄性や処理量、廃液処理方法などに応じ、予洗を省いたり洗浄槽を複数台に増やしたり、リンス槽に超音波を追加するなど多種多様な装置が製作されています。また、洗浄物は籠に入れて洗浄する場合が一般的です。籠の出し入れを人間が行う場合は手動式となり、自動的に籠の出し入れ/移動/洗剤投入などを行う場合は自動式と言われています。

こんな超音波洗浄装置があります
超音波金型洗浄装置

4面オーバーフローの超音波洗浄槽と濾過ユニットの組合せで洗浄剤を清浄に保ち、また高機能な揺動機構を搭載し、高精度の洗浄が可能です。また洗浄槽の上部で洗浄バスケットの出し入れが出来るので、作業性が向上します。
減圧超音波洗浄装置

本機は超音波洗浄槽内の圧力を減圧して洗浄する卓上型超音波洗浄機装置です。洗浄槽内の圧力が自動で減圧と常圧を繰り返し、従来の超音波洗浄方式では洗浄しきれなかった微細孔・袋穴部品の汚れの洗浄がスピーディーに行えます。
HDD用全自動超音波洗浄装置

HDD部品を洗浄する10槽式の超精密全自動超音波洗浄装置です。超音波付きの真空洗浄槽6槽のほかローダーとアンローダーを装備し、パーティクルと呼ばれる無機質の汚れまでも洗浄します。
炭化水素系単槽式超音波洗浄機

本機は超音波の物理的洗浄作用と揺動もしくはバレル回転の物理的作用、そして炭化水素系洗浄剤の溶解作用により付着物を除去します。金属加工部品に付着した切削油及び切削粉除去に最適です。
超音波洗浄装置取り扱い企業
株式会社カイジョー
長年の経験と実績による『洗浄ソリューション』と、『装置設計』のノウハウから最適な洗浄装置を提供。
株式会社ヒメジ理化イノテック(旧社名 新サン電子株式会社)
合理的な洗浄工程を構築するための槽、液構成に加温、循環濾過機構、安全対策を加え、オーダーメイドで設計から一貫製造致します。
超音波工業株式会社
幅広い周波数帯の超音波ユニットを使用して、お客様のニーズに合わせた洗浄装置をご提案いたします。
東京超音波技研株式会社
ユーザー様のご希望される仕様に合わせて打ち合わせ後、カスタムメイドでの設計・製作を致します。
本多電子株式会社
減圧超音波洗浄装置:微細孔・袋穴部品のエアーポケット内の空気を排除し、代わりに洗浄液を置換侵入させるため、ワーク形状を選びません。
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