音の正体とは何でしょう? たとえば、私たちに太鼓の音が聞こえるのは、太鼓を叩いたことによる振動が、空気を伝わって耳の中の鼓膜を揺らし、脳に信号が送られるからです。つまり、音の正体は「振動=揺らぎ=波」であり、気体・液体・固体などの中を伝搬する音の波のことを「音波」と呼びます。

「周波数」は、音の波が1秒間に振動する回数のことで「Hz(ヘルツ)」という単位で表されます。周波数が小さい数値であるほど低音、大きな数値であるほど高音となりますが、一般に人に聞こえる周波数の範囲(可聴域)は、低い音で20 Hz、高い音で20,000 Hz(20 kHz)くらいまでの間とされ、時報に使われている音は約880 Hzです。

では、「超音波」とは何でしょう? 一般的には「周波数が高く、耳に聞こえない音」と言われていますが、われわれ産業界では【超音波とは、聞くことを目的としない音波である】と定義しています。
現在、超音波はさまざまな産業で用いられています。たとえば、メガネ屋さんの店頭にある「メガネ洗浄機」には38kHzの超音波が使われていますし、使い捨て(100円)ライターのガスを入れるプラスチック容器と上部の着火装置は、20kHzの超音波によって瞬間的に溶着されています。
これらの超音波機器の中には、「耳に聞こえる音」を持ったものも含まれており、ピアノの最高音である約4,000 Hzの音は大気変化の観測に使われ、モスキート音と言われている19,000 Hz付近の音は、金属加工などに使われています。つまり、聞こえる音でも仕事で使われる場合は「超音波」として扱われているということです。

超音波は、電波とは異なる性質を持っています。超音波や音は真空状態の中では伝わりませんが、水や金属などの中を伝わります。
項目 真空中 気体中 水中 金属の中
超音波 ×
×
電波 ×
本表の特性は周波数や温度などで異なる場合が有ります
超音波は、空中を1秒間に約340m伝わります。東海道新幹線の車両の長さは約400mなので、先頭から最後尾に音が届くには約1.2秒もかかることとになります。
電波は1秒間に地球を7周半(約30万km)進みますが、超音波が地球を一周するには約33時間もかかることに・・・。
項目 空中を進む速さ 鉄の内部を進む速さ
超音波 0.340km/秒
約5km/秒
0.340km/秒
約5km/秒
電波 300,000km/秒
伝搬しない
また超音波には、直進・減衰・反射・屈折・回折という性質があります。 超音波のこれらの性質と、金属内部や水中を伝わること、進む速度が遅いことを利用し、プラスチック溶着機・医療用のエコーと呼ばれる診断装置や魚群探知機そして洗浄機などの超音波機器が作られています。
超音波洗浄は洗浄液中に超音波を放射し、音波で生じるキャビテーションや加速度等で汚れを取り除きます。超音波プラスチックウエルダーは、金属の超音波振動体から超音波振動をプラスチックに伝え、接合面が振動による摩擦で発熱し溶着します。超音波測定器は、空中や液中、人体中に超音波を放射し、音波の伝達時間や反射状態などから様々な測定が行えます。
超音波でできることは多岐にわたり、超音波は各種産業において、なくてはならないものとなっています。



そして、東京工業大学未来産業技術研究所の中村教授は、「超音波とは何か?」を漫画で表現されています。
中村健太郎教授 プロフィール

1963年生まれ 東京工業大学 科学技術創生研究院 未来産業技術研究所 教授
前日本音響学会会長
超音波研究の祖となる実吉純一先生(東工大第4代学長 教授)の研究を継承
研究内容: 超音波モーター、アクチェーター、センサー他、音場の可視化など
中村研究室ウェブサイト: www.nakamura.pi.titech.ac.jp
著書: 音のしくみ(ナツメ社)他  共著: 音のなんでも小事典(講談社)他


さらに超音波技術について詳しく学びたい方のために、下記の書籍をご紹介いたします。
超音波工業会は、一部書籍の編集にも尽力しております。

タイトル著者・監修者出版社発行年月
やさしい超音波の応用藤村聡雄(著)産報1964年
超音波回路石渡正一 谷沢 公彦 谷村 伸一(共著)日刊工業新聞社1968年
超音波の応用松原宗次(著)東京電機大学出版局1969年
超音波工学 -理論と実験-島川正憲(著)工業調査会1975年
超音波技術便覧実吉純一 菊池喜充 能本乙彦(監修)日刊工業新聞社1978年7月
超音波応用 増補改訂日本電子機械工業会超音波委員会(編)電波実験社1980年5月
超音波技術根岸勝雄 高木堅志朗(共著)東京大学出版1984年9月
やさしい超音波工学 増補版川端明 高橋貞行 一ノ瀬 昇(共著)工業調査会1988年1月
こうもりのヒソヒソ話高木堅志朗(著)裳華房1989年12月
超音波工学日本電子機械工業会(編) コロナ社1993年1月
超音波とその使い方谷腰欣司(著) 日刊工業新聞社1994年3月
超音波の世界本多敬介(著)日本放送出版協会1994年8月
音のなんでも小辞典日本音響学会(編)講談社1996年12月
超音波便覧超音波便覧編集委員会(編)丸善1999年9月
音響用語辞典日本音響学会(編)コロナ社2003年6月
超音波応用加工日本塑性加工学会(編)森北出版2004年5月
はじめての超音波超音波工業会(編)工業調査会2004年10月
洗浄剤・洗浄装置活用ノート日本産業洗浄協議会(編)工業調査会2004年10月
超音波利用技術集成吉田隆(著)エヌ・ティー・エス2005年4月
超音波用語事典「超音波用語事典」編集委員会 超音波工業会(共編)工業調査会2005年8月
トコトンやさしい洗浄の本日本産業洗浄協議会洗浄技術委員会(編)日刊工業新聞社2006年9月
図解雑学 音のしくみ中村健太郎(著)ナツメ社2010年3月
発行年月日順